10人が本棚に入れています
本棚に追加
ハルは博美に睨まれると、微笑み返し、自分の部屋へと戻っていく。
心優しい大叔母の背中を見送り、博美は手提げ鞄におにぎりを詰め込んだ。
時計を確認すると、思ったよりも時間が経っていたらしい。
慌てた様子で上着を羽織り、駆け足で家を飛び出した。
普段の日ならまだゆっくりと支度をしている時間なのだが、生憎と今日は日直なのだ。
日直業務のなかに、授業の準備の手伝いなども含まれているため、少し早めに学校にいかなければならない。
手伝いをサボる子もいるが、減点されてしまう。
「博美ちゃん?」
走っている博美を呼び止めたのは級友だった。
流石に顔馴染みの彼女を無視して走り去ることはできずに立ち止まる。
急に止まったからなのか、ぶわりと吹き出す汗。
「幸子ちゃん」
彼女、南雲幸子は学校の近所にある、寺の一人娘だった。
博美は好奇心旺盛な幸子に振り回されることもあるが、二人の関係は極めて良好と言える。
「あ、今日、日直か。呼び止めてごめん、また学校で話そう!」
大した用事ではなかったらしく、幸子はそう言って手を振った。
しかし、一度立ち止まってしまったせいか、どっと疲労が押し寄せてくる。
博美は少し悩んだ後、早足で歩き出す。
元々、時間に余裕をもって行動をしているため、走らなくとも良かったのだ。
予定の時間よりは遅れたものの、十分早い時間に学校へと到着することができた。
最初のコメントを投稿しよう!