創り人

創り出す者

〝カミサマ〟の言葉に答えた人間は、特別な一人を願う葵が思っている以上にたくさんいた。テレビやネットは、それから連日のように化け物の出現と、それと闘う不思議な人間達を発信した。

化け物が現れるまで、自分に力が宿ったことに気が付かなかったか、上手く使うことが出来なかった人間が多かったようで、テレビなどに映された人々は、恐らくそのままであろう顔がはっきりと映されていた。ネットの中ではすぐさま実名が暴かれ、力を宿した人間の職場や家にマスコミが殺到していた。

葵は、自分が田舎暮らしであったことを感謝した。初めて魔法を使った時、人気がない所だったお陰で、葵の化け物退治を誰も見ていなかったのだ。

化け物は、どうやら力を得た者の前にそれぞれ現れたようだった。現れるタイミングは葵のように当日だけでなく、数日後に出現した場合もあったと、ネットに力を得た人間が投稿していたことからわかった。

実名を暴かれた人間の惨状を見ていたからだろう。電話から数日経ってから化け物に襲撃された人間達は、顔を隠す為のお面を付けたり、葵のように顔を変えている者が増えていった。

逆にアメリカのハリウッドスターは、自分が演じたキャラクターと同じような能力を創り出し、中継にきたカメラに向かってポーズを決めていた。そんな目立ちたがり屋は各国に現れ、アフリカでは化け物よりも大きくなった巨人が現れたり、ロシアでは十数人が徒党を組んで化け物を退治していた。

ネットは、創る力を得た者達をファーレと名付けた。力を与えられたイタリア人が、華麗に登場した際にファーレと叫んだのが原因だ。

イタリア人はビルから華麗に着地した際にキラキラ輝く粉を纏い、マントを翻しながらファーレと叫んでマシンガンを創り出した。弾丸を化け物に撃ちまくり、化け物を倒すと大きく腕を空に突き上げて、勝利の雄叫びをあげた。あまりにも、彼のインパクトが強すぎて、不思議な力をもっている彼らの誇称で揉めていたネット住民は、満場一致でファーレに賛成した。

世界中を、混乱と歓声の渦に巻き込んだファーレ達は、自分達が何に成ったのか理解出来ないまま、だんだんと大衆の言葉に流され始めた。