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 咄嗟に理由に上げた先ほどは無視したルールへ、彼が興味を示しました。  私は女の子の中で流行っていた遊びを彼に教えました。改めて口に出してしまうと、なんて幼稚な遊びだったろうと思いました。  女の子の私でさえそう感じてしまうのだから、ましてや彼は呆れてしまうのではないかと思いました。  しかし、彼は丸く明るい双眸をしげしげと瞬かせるのです。 「そうなんだ… 女の子は面白いことをしてたんだな」  それがただのお世辞ではないことは、彼の様子から明々白々でした。  私の方が、ますます面映ゆくなってしまいます。 「もし見かけたら、教えるよ」 「ありがとう…」 「遊びって言ってたけど、こいつのこと好きなの?」  タブレットを差し出しながら、彼は少しいたずらめいて笑いました。その顔が、いつかの老先生と重なり、私は少し可笑しくて笑ってしまいました。  すると、彼はそれを肯定と見たのか、「なるほど」と笑って頷きました。  訂正をしようかと思ったのですが、けれど、『彼』を好きということに間違いはないでしょう。  私は代わりに彼に尋ねました。 「ここへは、よく来るの?」  旧校舎自体、人気は少なく、中庭にまで寄る学生は多くありません。みんなは新校舎の整然としてお洒落なラウンジの方が好きなようです。  彼は頷きました。 「老先生の授業のあとにここを見つけて、寄るようになった」  意外な返答に、私は目を瞬かせました。 「老先生の授業を取っているのね」 「あの先生、好きなんだ。 面白いし、学生を大事にしてくれるだろ」  そう言って彼は笑います。私も重ねて頷きました。「分かるわ」  私たちはその後、少しだけ老先生の話題に花を咲かせ、次の授業へと別れていきました。
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