写真を燃やす少女

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「……そうだ、咲坂さん。君は写真を燃やすことに抵抗はないよね?」  先程撮った写真を見つめたまま、僕は閃いた。彼女を利用するような形になってしまうのは申し訳ないが、この方法ならば少しは心が軽くなる気がして。 「まぁ、そうね……」と彼女が感情の読めない表情で曖昧に首肯した。 「じゃあさ、この写真燃やしてくれない?いつでもいいからさ」 「……せっかく撮ったのに?」 「どうせ部屋に溜まるだけだからいいかなって。思い切り燃やしてくれれば、スッキリするし」 「……そう」  妙に歯切れ悪く、彼女は写真をおずおずと受け取った。じっくりと写真を見つめるその顔には、どこか切なそうな色が滲んでいた。 「久世くん、他にも写真ない?」 「あるけど、それも燃やしてくれるの?」 「……後でね」 「じゃあ、これとこれもお願い」  制服のポケットに雑にしまい込んでいた写真を彼女に手渡す。夕焼け空の写真と、屋上から撮影した校庭の写真だ。何の変哲もない、普通の写真だった。 「ごめんね、面倒なこと押し付けて」 「別にいいわ。慣れてるもの、写真を燃やすの」  淡々と答えた彼女に苦笑いすれば、彼女は写真を手にしたまま立ち上がる。きっとこの後、昨日みたいに写真を燃やしてくれるのだろう。 「久世くん、これから写真を撮っていらなくなったら私にくれるかしら?」 「いいよ。その方が助かる」 「約束ね」  表情一つ変えないまま、咲坂さんは焼却所の方へと消えていく。  その日からだった。  咲坂さんが僕の写真を何かと求めるようになったのは。
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