あなたに気づいてほしかった

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六時間目が終わるまで、あと十分。 真っ直ぐに引かれた黄色のエンドラインに沿うように、私も数歩だけ、走ってみる。一歩、二歩。普段歩く時よりも膝を上げて、タタ、って。でもそれ以上はどうしたらいいか分からなくなって、止まってしまう。不必要に目立って、ボールをパスされたりでもしたら、きっと取りこぼしてしまう。ボールをどてどて追う私に、相澤さんは顔を真っ赤にして「棚橋ぃ!」と怒鳴るだろう。足が急に重たくなる。皆と同じ体育館シューズを履いているはずなのに、ピカピカの床を走る私の足の裏からはキュッキュッという音は鳴らない。 水曜日、三時半、体育の授業、バスケの試合。 突っ立っているわけじゃない。ちゃんと参加している。皆の動きを目で、追っている。ボールの動きに合わせて少しだけ身体を揺らしてみたりもする。一歩だけ進んで、また下がって。ちゃんと自陣のゴールの下で、守っている、ように見えるように。ちゃんと。
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