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「お待たせしました。姐さん、参りましょう」
「青山。学校で遥のこと姐さんって呼ぶの禁止な。俺の恋人だって知られたら、他所の組の奴に何かされるかもしれないからな」
誠吾が青山に釘を刺してくれて遥はホッとした。
男の自分が『姐さん』などと呼ばれていたら、周りにどう思われるのだろうと少し心配していたのだ。
「では……何とお呼びすれば…」
「一応、お前たちは従兄弟同士という設定で通ってもらうからな。特別に遥を名前で呼ぶことを許可する」
遥みたいな可愛らしい子と、青山のようないかにもといった感じの奴が一緒に居るのは不自然で……。
なので、一緒にいても不自然でないよう従兄弟という設定で通学してもらうことにしたのだ。
「畏まりました。では、あね……いや、遥さん、参りましょう」
「はい。じゃあ誠吾さん、行ってきますね」
遥はにこにことしながら誠吾に手を振って、青山と共に夕暮れの街の中に消えていった。
今日から始まる高校生活、自分がついていて守ってやれないのがもどかしい。
授業が終わるのは九時すぎだったよな…。
帰りは迎えに行ってやろう。
同級生の顔も拝めるかもしれないしな。
遥の新生活を応援してやりたいという気持ちは嘘ではないが、誠吾の心の中は不安でいっぱいだった。
「教室はここみたいですね、あね……いや、遥さん」
「そうですね。ドキドキしますね。あお……涼太さん」
遥に下の名前を呼ばれて青山は驚いて転びそうになってしまった。
そうだ、自分達は従兄弟なのだ。苗字で呼んだら変なんだよな……。気を引き締めて青山は教室のドアを開けた。
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