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「俺はそんな遥に甘えて……遥を縛りたくないよ。本当の気持ちが知りたいんだ……」
「せいご、さん………」
誠吾がそんな風に思っているとは思わなかった。
誠吾を喜ばせたい、誠吾のために何かをしたいという気持ちはあるが、縛られているなんて思ったこともない。
「僕は、せいご、さんが、好き」
「ああ」
「黒川の、家のみんな、も、好き」
「ああ」
「学校も、学校の、友だちも、好き……」
「そうか……そうだよな…」
遥はぽろぽろと涙を流して誠吾から目を逸らした。
誠吾が、酷く苦しそうな表情を浮かべたので言わなければよかったと後悔する。
「じゃあ…学校を辞めたいわけじゃないんだな?」
「辞めたく……ない、けど…。みんなに、もう、迷惑かけたく、ないです……」
自分のせいで誰かが傷つくところなど、もう見たくない。
だが、辞めたくないと口に出してみて……同級生との時間や知らないことを学んで知る喜びを思い出してしまった。
僕は……我儘だ……。
ここに居られるだけで幸せなのに……。
誠吾は泣き崩れる遥の小さな体をぎゅっと抱き締めた。
もう少しで、遥の本当の気持ちに蓋をして自分の思い通りにさせてしまう所だった…。
「じゃあ、辞めるのやめろ。留年はしちまうだろうが………通いたいんだろ?」
「でも……でも、それだと……」
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