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翌朝、目を覚ました遥は自分がベッドで寝ていたことに驚いてしまった。
確か誠吾を待ちながら勉強していたと思うのだが……。いつの間にか眠ってしまっていたのだろう。
隣では、誠吾がぐっすりと眠っている。
眠っていても格好良いなぁと、暫く誠吾の寝顔に見蕩れていたが、朝食の支度をするために遥はそっとベッドを降りた。
着替えて音を立てないように台所に向かう。
久しぶりに台所に立つと、嬉しくて顔がにやけてしまった。
またここで、皆の食事の支度が出来ることが嬉しい。
外で体を張って頑張る皆を、少しでも支えていきたかった。
それにしても……。
昨夜は久しぶりに誠吾に抱かれるかと思ったのに、うっかり寝てしまうとは。
残念だったな……。
今夜は絶対起きていようと思いながらも、遥は朝食の支度を進めていった。
味噌汁の味噌を溶いたところで、山田が起きてきて台所に顔を出した。
「おざ……姐さん、おはようございます」
「山田さん、おはよう、ございます」
山田が黒川に来てから、ずっと具合が悪かった遥が家事をするところは見たことがなかった。
エプロンを着けてテキパキと料理をする遥に、山田は思わず見蕩れてしまう。
「おざき……じゃない、姐さん、何か手伝う…い、ますよ」
慣れない敬語に、しどろもどろになる山田に遥はくすくす笑う。
「山田さん、今まで通り、話して、ください。山田さんには、尾崎って、呼ばれた方が、落ち着きます」
「いや、そんな、下っ端の俺がそんなことできないっす……」
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