第7夜

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顔を赤らめながら白状する遥を、誠吾はぎゅうぎゅう抱きしめて髪に顔を埋めた。 目の前で繰り広げられる誠吾のデレッぷりに、山田はどう対処していいのか分からず固まってしまう。 極道の中の極道。 憧れの誠吾が……恋人の前ではこんなにデレデレになってしまうのだと、驚きしかなかった。 「ほら、ボスはまた所構わずイチャついて……いい加減にしてください。山田が困っているでしょう」 「痛っ」 台所に入って来た山根が誠吾の後頭部を思い切り叩いた。 若頭に平気で文句を言って叩いたりできる腹心の山根のことを、組員達が一番恐れていると聞いていたが……山田はそれも納得出来た。 「尾崎君も、嫌なら嫌とちゃんと言いなさい。でないと、ボスは馬鹿ですから行動がエスカレートしますよ」 「山根お前、俺のこと猿かなにかだと思ってねぇか?」 「違いましたか?」 山根は涼しい顔で誠吾にそう言い放つと、誠吾を引き摺って台所から出て行った。 「山根の兄貴……強いっすね」 「はい。誠吾さんも、山根さんの、ことを、一番頼りに、しているので、頭が、上がらない、みたいです」 くすくすと遥が笑う。 黒川組では日常的な光景だ。 ここ最近は山根も自宅マンションに帰らず、殆ど東の部屋で暮らしているため、こうして朝から会えて遥は嬉しかった。 山根が居ると、誠吾も素のままで楽しそうなのだ。 ここが自分の居場所だと、そう思えて遥は嬉しい。 山田が黒川組に加わってくれたことも本当に嬉しかった。
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