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「若頭、尾崎の前だと全然違うんだな」
「誠吾さん、いつも、あんな感じ、じゃないんですか?」
全然違う。
もっと強くて男らしい感じなのに…。
「いや、そんだけ尾崎に心を許してるんだろうな」
「だったら、嬉しい、です」
遥はそう言って笑うと、朝食の準備を進めていった。
続々と組員達が起きてきて、台所を手伝いに来たため、台所には人が溢れて山田は台所から弾き出されてしまった。
「おう、山田。おはよ」
「青山の兄貴、おはようございます」
起きてきた青山が、台所にチラリと視線を向けて苦笑する。
「姐さんが久しぶりに台所に立ったから、弾き出されたんだろ?」
「あ……はい。凄いっすね…、皆さん我先にと手伝い始めちゃって…」
「姐さんはうちの組のアイドルだからな」
確かにアイドルという言葉がピッタリだ。
ヤクザがこぞって朝食の支度を手伝っている光景は、不思議なものだ。
だが、皆遥を中心に楽しそうだ。
「ここは……明るくて、温かいっすね…」
「うちがこんな雰囲気になったのは、姐さんが来てからだよ。姐さんが笑ってくれてるから、皆姐さんに救われてんだ」
遥のために頑張りたい。
遥を守りたいと言う気持ちで、組は一つに纏まっている。
「お前も、もううちの家族だ。姐さんのことは大事にしろよ」
「はい……」
家族……。
初めて家族と呼ばれるものを持てて、山田は心から嬉しかった。
遥との出会いが自分をここに導いてくれたのだ。
遥にはあんなことをしてしまった負い目もある。絶対に遥を守っていこうと山田は心に誓った。
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