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「皆さん、おかわりありますから!沢山召し上がって、くださいね」
「姐さんの飯……やっぱり美味いっす」
「なんだい?アタシのご飯が不味かったって言うのかい?」
組員達が口々に遥の朝食を褒めるので、マツが不機嫌に組員達をじろりと睨んだ。
「だって……マツさん、味噌汁に前の日の残り物を全部入れるじゃないすか……」
「この前だって、味噌汁に餃子と焼売が入ってたじゃないっすか……」
「煩い子達だね。食べさせてもらえるだけ有難いと思いな!」
マツと組員達のやり取りを、遥はにこにこしながら眺めていた。
本気で喧嘩している訳では無いと分かっているので、安心して見ていられる。
「遥、久しぶりに大人数の飯作りで疲れてないか?」
「正蔵さん、皆さん、手伝って、くれたので、楽しかった、です」
正蔵が心配して声をかけると、遥は首を横に振って笑って楽しかったと言った。
そうかそうかと、正蔵が遥の頭を撫でると、誠吾が横から遥を引っ張って自分の後ろに隠す。
「若頭、姐さんの笑顔が見れないです!」
「うるせぇ!皆じろじろ見すぎなんだよ」
「俺達の癒しを独り占めなんて狡いです!」
「うるせぇ!遥は俺のだ!」
誠吾の子供っぽいヤキモチに、山根が大きな溜め息をつく。
東がそんな山根の肩をまあまあと宥めながら叩いて……いつもの黒川組の朝だ。
賑やかな食卓を囲みながら、遥は幸せを噛み締めていた。
ずっとこのまま、何事もなくこうして皆と笑って暮らせたらと願いながら。
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