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東の運転は慎重で、殆ど揺れることも無くて快適だ。
東さんて、本当に何でも出来るよなぁ。
腕も立つし頭も切れると誠吾さんも言っていたし……。
寡黙な人だけど、優しいから落ち着くし…。
運転する東を見ながら、遥はそんなことを思っていた。
兄のように思っている山根の恋人ということもあるのか、遥は東のことも兄のように慕っている。
「そんなに見られたら緊張しますね」
「あ、ごめんなさい。運転、上手だなって」
「姐さんは免許は取らないんですか?」
運転免許……僕が?
自分が運転するなんて考えたこともなかったけど……そうか、運転免許を取れば僕も車に乗れるのか。
「免許を取ろう、なんて、思いつきません、でした。ぜひ……チャレンジして、みたいです」
「若頭が姐さんが車を運転するのをお許しになるかは、疑問ですけどね」
東はそう言ってくすっと笑う。
『遥!危ないぞ!事故に遭ったらどうするんだ!』
誠吾ならそう言って全力で止めてきそうだ。
「そうですね……。高校に、通えるだけで、十分なのに、自動車学校まで、通いたい、なんて言えない、です」
「まあ、運転に興味がおありなら、若頭にお話してみても……。姐さんがお願いすれば、反対していても最終的には折れてくれると思いますよ」
普段あまり他人と話さない東だが、遥には気を許してこうして会話をしてくれるようになっていた。
東は組でも良識があって落ち着いているので、話していて凄く安心出来る。
さすが山根さんの彼氏さんだなと遥は思った。
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