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「今は、とにかく、リハビリを、頑張ります。僕がこうして、ゆっくりしか、話せないと、悲しい顔、する人も、居るので…」
遥はリハビリの甲斐あって、だいぶスムーズに話せるようになってきた。
だが、ゆっくりと言葉を区切りながら遥が話していると、山田も青山も悲しそうな顔をする。
誠吾は気にしていない様子だが、本当は気になっているのだろうと遥は思っていた。
「姐さんは頑張ってますよ…。周りに気を使いすぎて、あまり無理をしないでくださいね」
「はい。ありがとう、ございます」
東との穏やかな時間は心地よく、あっと言う間に病院に到着して地下駐車場に車を停めた時だった。
車から降りようとする遥を、東が無言で制止した。
「東さん………?」
東は車の中から周囲を見渡すと、1箇所に視線を定め注視している。
「姐さん、申し訳ないですが今日はリハビリは休んでください。ベルトを着けて……」
「……はい」
先程までの穏やかな顔が嘘のように、東の表情は険しい。
自分には何が何だか分からないが、何かが起こっているのだと遥は感じた。
「多少運転が荒くなるかもしれないので、しっかり掴まっていて下さいね」
「分かりました」
東は勢いよくアクセルを踏み込んで、一気に車を加速させて駐車場から出る。
通りに出てからミラーで確認すると、後方から黒いバンが付いてきているのが確認できた。
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