第7夜

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「あの人、ボスに並々ならぬ執着心がありますからね。尾崎君を押さえればボスを何とかできると思っているのでしょう…」 「正々堂々と俺に向かってくればいいのによ」 迎えの車の中で誠吾はイラつきを抑えきれなかった。 黒崎の顔を思い出しては腹が立つ。 「佐山さんが止めてくれなければ、ボスが黒崎を殴るかと思いましたよ」 「あそこで殴ったら不味いことくらい、俺にも分かるっての。遥にちょっかい出されんのが一番腹立つんだよ」 だから悟は執拗に遥を狙うのだろう。 遥が誠吾と付き合うようになり、弱点の無かった誠吾に弱みができてしまった。 守るものが出来て強くなった面もあるが、それ以上にリスクも大きい。 「尾崎君の前では、そんな風にイライラしないで下さいよ」 「ああ。遥だって訳わかんなくて不安だろうからな………」 遥が不安で泣いていなければいいが……。 誠吾はそう思いながら帰宅したのだが……。 「誠吾さん、おかえりなさい」 玄関に出迎えに来てくれた遥は、にこにこしておりいつも通りだ。 家の中は甘い香りでいっぱいで、聞けば焼き菓子を焼いているのだと言う。 「リハビリ、なくなって、時間が、できたから……。マドレーヌ、もう焼けますよ」 「お、おう。じゃあ、焼けたら貰うよ」 「楽しみに、しててください、ね」 遥はパタパタと台所に戻っていった。 不安そうな様子も全く無い。
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