第7夜

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「あ、若頭、おかえりなさい」 「東……今日は世話かけたな。お前がついてるから安心はしてたが…」 それにしても。 危ない目に遭いそうになって、何故焼き菓子なのだろうか。 「姐さんは肝が座ってますね。皆がカリカリしてたら、こんな時は甘いものでも食べて落ち着いた方がいいって、お菓子作り始めましたよ」 「なるほど……。そういう事か」 確かに、こんな甘い香りがする中では物騒なことは考えにくいよな。 遥なりに考えてのことだったのか。 それにしても………。 「尾崎君の考えることは、我々の常識の斜め上をいきますね」 くすくすと山根も笑っている。 笑い事ではない状況なのに、匂いに釣られて誠吾のお腹もぐぅと音をたてた。 先程まで、あんなに黒崎にイラついていたのが嘘のようだ。 「あー、とりあえず親父のとこに顔出してくるわ」 誠吾が正蔵の部屋に向かおうとして廊下を歩いていると、廊下の向こうから当の正蔵が歩いて来た。 「そろそろ菓子が出来る頃かと思って出てくれば……。誠吾、帰ったのか」 「おう。遥を追い回していた奴らについて、何か分かったか?」 正蔵は首を横に振って、尻尾が掴めなかったと答えた。 「車のナンバーも隠してやがったしな…。情報屋から情報を集めてるところだ」 「会合で、黒崎は何か知ってる様子だったぞ」 「やはりそうか……。まあ、遥が狙われたのだから悟が噛んでるのは間違いないだろうな」
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