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「あ、若頭、おかえりなさい」
「東……今日は世話かけたな。お前がついてるから安心はしてたが…」
それにしても。
危ない目に遭いそうになって、何故焼き菓子なのだろうか。
「姐さんは肝が座ってますね。皆がカリカリしてたら、こんな時は甘いものでも食べて落ち着いた方がいいって、お菓子作り始めましたよ」
「なるほど……。そういう事か」
確かに、こんな甘い香りがする中では物騒なことは考えにくいよな。
遥なりに考えてのことだったのか。
それにしても………。
「尾崎君の考えることは、我々の常識の斜め上をいきますね」
くすくすと山根も笑っている。
笑い事ではない状況なのに、匂いに釣られて誠吾のお腹もぐぅと音をたてた。
先程まで、あんなに黒崎にイラついていたのが嘘のようだ。
「あー、とりあえず親父のとこに顔出してくるわ」
誠吾が正蔵の部屋に向かおうとして廊下を歩いていると、廊下の向こうから当の正蔵が歩いて来た。
「そろそろ菓子が出来る頃かと思って出てくれば……。誠吾、帰ったのか」
「おう。遥を追い回していた奴らについて、何か分かったか?」
正蔵は首を横に振って、尻尾が掴めなかったと答えた。
「車のナンバーも隠してやがったしな…。情報屋から情報を集めてるところだ」
「会合で、黒崎は何か知ってる様子だったぞ」
「やはりそうか……。まあ、遥が狙われたのだから悟が噛んでるのは間違いないだろうな」
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