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「みなさーん、お茶が、入りましたよ」
広間から遥の声がした。
遥の声で、ぞろぞろと組員達が広間に集まって来る。
「マドレーヌと、クッキー、焼いたので、お茶請けに、召し上がって、下さいね」
遥が焼きたての焼き菓子を皆に勧めて回る。
甘いお菓子のせいで皆頭に血が上っていた筈なのに、すっかりその熱は冷めていた。
「遥、これ美味いな」
「よかった、です。僕は少し、席を、外します。失礼します、ね」
皆が落ち着いたのを見届けると、遥は一同に頭を下げて広間から出て行った。
「尾崎君…流石というか。我々が落ち着いて話せるように、場の空気を変えていきましたね」
「ああ。俺の自慢の嫁だからな」
情報屋から入った連絡によると、バンは隣町で発見されたが盗難車だったらしく、何の痕跡も残っていないとのことだった。
盗まれたのは二階堂の管轄で、やはりといった感じだ。
「とりあえず、引き続き悟の潜伏先を探るか……。後は黒崎の出方を見るしかないな」
「そうだな。誠吾、遥はどうする?来週から学校行かせるんだろ?」
正蔵の言葉に誠吾は頭を抱えた。
ここにきて、また学校は無理だなどと遥が可哀想で言えやしない。
「どうするかな…。青山と山田で守りきれるか……」
「そのことなんだけどよ。俺、ちょっとあの高校の校長にツテがあってな……」
正蔵が話し始めた遥が無事に高校に通うための対策は、思いがけないものだった。
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