第7夜

25/25
前へ
/232ページ
次へ
「みなさーん、お茶が、入りましたよ」 広間から遥の声がした。 遥の声で、ぞろぞろと組員達が広間に集まって来る。 「マドレーヌと、クッキー、焼いたので、お茶請けに、召し上がって、下さいね」 遥が焼きたての焼き菓子を皆に勧めて回る。 甘いお菓子のせいで皆頭に血が上っていた筈なのに、すっかりその熱は冷めていた。 「遥、これ美味いな」 「よかった、です。僕は少し、席を、外します。失礼します、ね」 皆が落ち着いたのを見届けると、遥は一同に頭を下げて広間から出て行った。 「尾崎君…流石というか。我々が落ち着いて話せるように、場の空気を変えていきましたね」 「ああ。俺の自慢の嫁だからな」 情報屋から入った連絡によると、バンは隣町で発見されたが盗難車だったらしく、何の痕跡も残っていないとのことだった。 盗まれたのは二階堂の管轄で、やはりといった感じだ。 「とりあえず、引き続き悟の潜伏先を探るか……。後は黒崎の出方を見るしかないな」 「そうだな。誠吾、遥はどうする?来週から学校行かせるんだろ?」 正蔵の言葉に誠吾は頭を抱えた。 ここにきて、また学校は無理だなどと遥が可哀想で言えやしない。 「どうするかな…。青山と山田で守りきれるか……」 「そのことなんだけどよ。俺、ちょっとあの高校の校長にツテがあってな……」 正蔵が話し始めた遥が無事に高校に通うための対策は、思いがけないものだった。
/232ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2797人が本棚に入れています
本棚に追加