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「お、揃ったか。じゃあホームルーム始めるぞ~」
のんびりとした声が教卓の方から聞こえた。
いつの間にか男性教師らしき人物が名簿を持って教卓の前に立っている。
人の気配には敏感なはずの青山でも気づかないほど、さり気なく教室に入ってきたようだった。
「席は………まあ、適当に座ってくれ。俺はこのクラスの担任の池田海司だ。よろしくな」
池田先生の口調はのんびりとしていて、穏やかだ。
体格はがっしりとしており長身だが、細い目と若干眠そうな感じからおっとりとした印象を受ける。
入ってくる気配がなかった……。
呑気そうに見えるが普通の奴じゃないな…。
青山は担任教師に警戒心を持ったが、遥は優しそうな先生で良かったと安心していた。
「とりあえず自己紹介してくれ。名前と、なにか一言頼むな」
先生が端に座った柴田さんを指す。
柴田さんはにこやかに立ち上がって挨拶を始めた。
「柴田幸子、主婦です。子どもが三人います。子育てが一段落したのでもう一度勉強してみたくなり入学しました。よろしくお願いします」
お辞儀をして座ると、後ろに座っていた真凜が立ち上がった。
「浦川真凜です。キャバクラで働いてまーす。お客さんと話すのにもう少し賢くないとダメかなと思って来ました。よろしくお願いしまーす」
「佐々木ヒカルです。ホストやってます。中卒だと馬鹿にされるんで入学しました。よろしくお願いします」
「青山涼太。よろしく」
青山も仕方なく皆に挨拶をする。
気の利いた事を言えるはずもなく、挨拶は簡単なものだった。
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