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第8夜
広間での打ち合わせが終わると、誠吾は自室に戻った。
遥はソファに腰掛けて読書をしていたが、誠吾に気付いて読んでいた本を閉じた。
「お話し、終わりました、か?」
「ああ。焼き菓子ありがとな」
誠吾は遥の隣に腰掛けると、遥の肩を抱いて自分の方に引き寄せた。
「今日は怖かったろ?大丈夫か?」
「東さんが、落ち着いていたので、全然、怖くなかった、です」
つくづく今日は東に任せて良かったと思う。
山根と東には誠吾も全幅の信頼を置いている。
「今日の車、あの人、ですよね……」
「おそらくな」
ですよねと遥は俯いた。
悟が逃げていると聞いて、きっとまた何かされる予感はあった。
「誠吾さん、やっぱり、学校は、やめます。皆さんの、負担に、なりたくない、です」
「大丈夫だ。学校で遥を守る秘策を親父が考えついたからな」
秘策?と、遥が小首を傾げる。
正蔵が考えた案は、誠吾も驚くものだったがなかなか悪くない。
「まあ、それはおいおい話すから…。とにかく今日は遥が無事で良かった…」
「東さん、凄いです。車を、降りる前に、変だなって、気が付いて」
東は寡黙で控えめなのであまり目立たないが、組の中では一番できる男だと誠吾は思っている。
だが、恋人が別の男を褒めるのを聞くのはあまりいい気分ではない。
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