2797人が本棚に入れています
本棚に追加
「外で何があろうが、家に帰れば姐さんが美味い飯を用意して笑顔で待っていてくれる。それがどれほど有難いことか……」
「そうです……よね」
台所の前に立つ青山と山田に気付いた遥が「おかえりなさい」と、笑顔で頭を下げた。
「姐さん、今日はハンバーグですか。久しぶりですね」
「皆さんの、リクエストが、あったので」
にこにこ笑う遥の周りは、皆笑顔になっていた。ただ一人、マツだけは仏頂面をしている。
「混ぜて焼いたら分からなくなるんだから、もっと色々混ぜたらいいのに……」
「マツさん!姐さんに変なことを吹き込まないで下さい!」
マツはぶつぶつ文句を言いながらも、遥の傍で食事作りをサポートしていた。
遥も、マツに話しかけながら楽しそうに料理をしている。
家全体が、遥の放つほわほわとした温かいオーラに包まれているようだ。
皆思うのだ。
この心地よい空間を生み出す、遥のことを大切にしなければならないと……。
「遥、今日のハンバーグ、美味かったぞ」
夕食は好評で、余りのハンバーグをじゃんけんで争奪するなど、今日も賑やかな食卓だった。
悟が近くまで迫ってきているのに、組員達にそんなプレッシャーを感じさせないのは遥のおかげだろう。
「皆さん、大変なお仕事、だから…。少しでも、役に立ちたい、です」
「ああ。いつもありがとな」
遥は嬉しそうに笑うと、誠吾のシャツにアイロンをかけ始めた。
クリーニングに出せば簡単なのに、誠吾の着るものは自分がアイロンをかけたいと譲らない。
誠吾は、そんな遥の少し頑固なところも愛しいと思う。
最初のコメントを投稿しよう!