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午後から誠吾と山根は、冴子の店に向かった。
「あら、いらっしゃい。若様…早速様子を見に来てくれたのね」
「表の看板割れてたな。あれも例の奴らの仕業か?」
外に置かれた店名の『Forest』と書かれた木の看板には、大きな亀裂が入っていた。
「そうなの。カップも割られたのよ。もう、怖くて……」
「そいつら、いつ来るんだ?」
「だいたい閉店間際かしら。だから他のお客様には被害が今のところないのだけど…」
黒川のシマで、そんな幼稚な嫌がらせをするとは……舐められたものだ。
「冴子さん、もし次に奴らが現れたら、すぐにうちの事務所に連絡下さいますか?」
「ええ。よろしくお願い致しますね」
冴子は誠吾には怖いと甘えていたのに、山根の声掛けには素っ気なく返事をする。
誠吾に、やはり未練がありそうな様子だ。
「若様、あの可愛らしい恋人は今日はどうなさったの?」
「遥は、ちょっと体調を崩して寝てんだ」
まあ気の毒に……そう言う冴子だが、全く気の毒そうな様子ではない。
誠吾が自分の為に来てくれたのが嬉しくて堪らないといった様子だ。
「とりあえず……夜は誰かを寄越すから」
「若様は来て下さらないの?」
「ボスはお忙しい方なので。では、我々は失礼します」
山根は誠吾の腕を引っ張って店から出た。
誠吾が昔寝た女達は、我の強い女ばかりだと呆れてしまう。
こんなに女を見る目がないのに、よく遥と付き合えたものだ。
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