2798人が本棚に入れています
本棚に追加
「相変わらず肉食獣みたいな女ですね……」
「この前、遥と来た時はおとなしかったんだけどな…」
怖くてと言いながらも、冴子は全然怖そうではなかった。ヤクザに絡まれて店の看板まで割られたのなら、もっと怖がってもいいと思うのだが。
山根の中で、冴子に対する不信感が募る。
「本当に……よその組の者がちょっかい出しているのでしょうか……」
「ん?何か言ったか?」
山根は「いえ、何も」と答えると、誠吾を急かして店から離れた。
どこからか、誰かに見られているような気がする……。それは誠吾も感じていたようだ。
「何か……良くねぇ感じがするな」
「殺気ではありませんけど……嫌な感じですね」
店から離れて通りに出ると、もう嫌な感じは消えていた。
冴子の店の周囲で、何かが起こっている。
遥の高校と、冴子の店は距離が近い。
夜には組員を常駐させて様子を見ようと山根は思った。
事務所に戻り、残った仕事を片付けてから家に戻ると遥が玄関に出迎えてくれた。
「おかえりなさい。お疲れ様、です」
にこにこと笑う遥の額に手を当てても、熱感は感じられず熱は下がったようだ。
「遥ただいま。熱は下がったみたいだな」
「少し寝たら、下がって、ました」
もともと大した事なかったんですよと言いながら、遥は一緒に帰って来た山根にご心配おかけしましたと頭を下げた。
最初のコメントを投稿しよう!