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第9夜
「誠吾さんと、学校に通うなんて、不思議な気が、します」
「学校では、俺がヤクザだってことも、遥が俺の嫁だってことも内緒な」
余計な混乱を招くのは得策ではない。
本当は他の生徒の前で、遥が自分のものだと見せつけたかったのだが……。
「はい。秘密、ですね」
「ああ。秘密だ」
ちゅっと軽くキスをして、二人で玄関に向かうと青山と山田が既に支度をして玄関で待っていた。
「若頭、姐さん、参りましょうか」
「おいお前ら、俺は学校では黒川先生だからな。間違っても若頭なんて呼ぶなよ」
「はい!若頭、了解しました!」
本当に分かってんのかよ……。
一抹の不安を抱えながら、四人で送迎の車に乗り込んで高校に向かった。
「じゃ、俺は校長に挨拶してくるから」
「はい。では、また、後で……」
遥達と別れた誠吾は、まず校長室に向かった。
親父のやつ、一体どう言ってヤクザの俺を高校教師として潜り込ませるなんて説得したのだろうか……。
疑問に思いながら誠吾が校長室をノックすると、中から「どうぞお入りください」と声がした。
「ああ、今日から来て下さる黒川先生ですね」
小太りで人の良さそうな男性が、笑顔で誠吾を迎え入れてくれた。
思いがけない歓迎ムードに、誠吾はたじろぎながらも深々と頭を下げる。
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