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「今日から新しい先生来るのよね。今度は普通のまともな人がいいわね」
柴田の言葉に青山が苦笑する。
新しい先生が、黒川組の若頭だと知ったらどう思うだろうか。
少なくとも普通のまともな人ではない。
若頭がどんな風に先生として教壇に立つのか……青山は若干不安だった。
「今日から臨時でこのクラスを担当します。黒川誠吾です。よろしくお願いします」
教壇に立つ誠吾が、あまりにも普通の教師のようで、遥も青山も山田も驚きを隠せなかった。
まるでこちらが本職のようにスマートで落ち着いており、傍目にはヤクザだなんて分からないかもしれない。
誠吾さん、堂々としてて格好良いな…。
遥がうっとりと誠吾を見つめていると、遥と目が合った誠吾がふっと小さく笑った。
いつもと違う誠吾にドキッとした遥は慌てて下を向く。
こんなのが毎日続いたら、勉強どころじゃなくなっちゃうよ………。
青山と山田の思いも複雑だった。
悟を捕まえるまで、誠吾が教師として潜ると聞いた時、それはいい考えだなどと思ったのだが……。
こうして教壇に立つ誠吾を前にすると、若頭から勉強を教わるのだという現実に気がついてしまった。
山田など、いつも授業中に寝ていたのに……今後は一瞬たりとも気が抜けないではないかと、背筋が伸びる思いだ。
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