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ホームルームを終えて、給食を食べに食堂に向かう中、同級生達は誠吾の話題で持ちきりだった。
「黒川先生、マジでかっこいいんだけど!あんなかっこいい先生、居るんだね!」
「本当にねぇ……。年甲斐もなくドキドキしちゃったわ」
真凜と柴田がキャッキャッと盛り上がる中、遥の心中は複雑だった。
確かに誠吾は格好良い。
誠吾が褒められて嬉しいのだけど……。
「尾崎君、まだ調子が悪いんですか?」
「島村さん……大丈夫です。新しい、先生、かっこよかった、ですね…」
「そうですね。何と言うか…オーラがある感じでしたね。でも、私は尾崎君の方が……」
瞳は顔を赤らめながら遥を見たが、遥はきょとんとして島村の言葉の意図に気付いてはいない。
尾崎君の方が、綺麗で優しくて私は好きですって……さらっと言えたらいいのに。
瞳が自分に好意を向けているなど、夢にも思っていない遥には瞳の思いは伝わらないだろう。
二人の後ろをついて歩く青山は、瞳が不憫だなぁと思って見ていた。
姐さんは若頭にベタ惚れだから、周りが自分をどう思うかなど考えたこともないだろう。
隣を歩く山田が静かなので、青山は山田の顔を覗き込んだ。
複雑な表情をしていた山田だが、青山と目が合うと慌てて「兄貴、何ですか?」と尋ねる。
「いや……どうかしたか?」
「いえ、何も。あ、給食何かなって考えてました」
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