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遥もそんな可愛い顔で笑うなよ……。
遥にその気がなくても、皆が勘違いするじゃないか。
「黒川先生は、以前はどちらで教えておられたんですか?」
一緒に給食を食べていた女性の英語教師に質問されて、誠吾は用意してあった答えを述べた。
「ずっと学習塾で働いてまして…。教壇に立つのは恥ずかしながら初めてなんです。色々ご指導お願い致します」
こう言っておけば、教師としてイマイチでも言い訳ができるだろう。
いや、きっとイマイチな筈だ。
そもそも俺は体を動かすのが好きで、勉強が嫌いなんだから……。
さっさと悟を捕まえてケリをつけないと……俺に普通の教師のふりなど、そう続けられる筈がない。
武闘派ヤクザの誠吾だ。授業が始まるときっとすぐボロを出すのではないかと、誠吾自身も遥達も心配していたのだが…。
「はい、では教科書53ページを開いてください」
皆の心配を、良い意味で裏切る形で誠吾は完璧に授業を進めていく。
昨日、山根に授業の進め方を相談しておいて良かったと思いながら、誠吾は本物の教師のように教壇に立っていた。
「この公式は便利なので皆覚えるように」
黒板にさらさらと公式を書いている誠吾が、青山には信じられなかった。
事務所でパソコンや書類に向かっているのは見たことがあるので、誠吾はきっと頭が良いのだろうとは思っていたが……。
喧嘩が強く、誰にも負けたことの無い誠吾と勉強のイメージが結びついていなかった。
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