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遥も、誠吾の分かりやすい授業を受けながら吃驚していた。
確かに誠吾に勉強を教わった時、教え方が上手だなとは思ったが……。まるでずっと教職に就いていたかのようだ。
誠吾さんは本当に凄いや。
僕も頑張って勉強しなくちゃ……。
恋人の知らなかった一面が見られて、遥はその日はずっとフワフワと落ち着かない気持ちで過ごした。
「さ、遥さん、帰りましょうか」
「まだ、誠吾さんが……」
「若……黒川先生は、冴子さんのカフェに寄ってから戻られるそうです」
冴子さんの……。
先日会った、あの綺麗な女の人のカフェに誠吾が一人で行くのかと思うと、遥の胸がどきどきと早鐘を打つ。
「冴子さんの店が嫌がらせを受けているらしくて……学校の帰りに何も無いか確認するんだそうです」
「そう、ですか……」
誠吾と冴子は、とてもお似合いの二人に見えた。冴子の誠吾を見る目は、愛しい人を見る目のような気がして……。
「遥さん、大丈夫ですか?疲れました?」
「大丈夫です。では、帰りましょう」
このもやもやとした気持ちが、ヤキモチであると遥は自覚していた。
誠吾は本業の仕事で冴子の所に行くのだ。
一人で行かないで欲しいなどと、自分が言っていいはずがないと、遥は頑張って自分を納得させる。
誠吾さんは十分過ぎるほど僕を大切にしてくれているのに……。
誠吾の愛情には何の疑いもないが、一度会っただけの冴子のことがどうしても遥は気になっていた。
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