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誠吾も、遥の登校初日は一緒に帰るつもりだった。
冴子の店の件は、東に頼んで誰かを寄越すつもりでいたのに、昼に冴子から電話があったのだ。
『今日の夜、例の奴らからまた行くぞって電話があったの……。今日、若様来て下さらない?』
冴子直々に指名されて、授業を終えた誠吾は仕方なく冴子の店に向かった。
冴子のカフェの閉店時間前に到着した誠吾だったが、ドアには『CLOSE』の札が下がっている。
今日の帰りに寄ると言っておいたはずだが……。怖くなって早めに店を閉めたのだろうか。
誠吾はドアを叩いて冴子の名前を呼んだ。
「冴子、俺だ。何かあったのか?何もなければ俺は帰るぞ」
誠吾が声を掛けると、中からカチャリと鍵の開く音がした。
誠吾は躊躇わずドアを開けて店の中に入った。
「若様………!」
誠吾が店に入ると同時に、冴子が勢いよく誠吾に抱き着いてきた。
冴子の衣服は所々破れており、それを見た誠吾が眉を顰める。
「乱暴されたのか……?相手は誰だ?!」
「二階堂……悟って、名乗ってたわ。若様に、必ず自分の名前を伝えろって……」
「あのクソが……!」
悟への怒りで目の前が真っ赤に染まる。
何故、冴子なのだ?
昔俺と寝たことはあっても、今は全く切れている。冴子を襲ったところで悟に何のメリットがあるのだ……。
「若様……、私、ここには居られない。また、あの人が戻って来たら……」
「仕方ないな……とりあえず今日はうちに来い」
誠吾はポケットから携帯を取り出すと、山根に電話を掛けた。
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