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簡単に事情を説明すると、山根はすぐに迎えを寄越すと言った。
怯える冴子を宥めて、着替えて身の回りの品を持ってくるよう誠吾は促す。
「若様、お待たせしました」
「お前……支度早いな」
着替えを済ませた冴子がスーツケースを持って誠吾の前に現れたのだが……。
女の支度にはもっと時間がかかると思っていたのだが、随分支度が早いことに誠吾は驚いた。
早くこの場所から離れたいのかもしれないな…と、誠吾が思った時に山根が迎えに現れた。
「あら……迎えは山根さんなの…」
「冴子さん、この度は大変でしたね」
あからさまにガッカリする冴子に、山根は淡々と挨拶をすると荷物を受け取って車のトランクに積み込んだ。
山根と冴子は、どうも相性が悪いようだと鈍感な誠吾でも肌で感じている。
「どうしますか?病院に寄ってから家に向かいましょうか。レイプされたなら緊急避妊薬を処方してもらわないと……」
「……最後まではされてないわ。もうすぐ若様が来ると言ったら、途中までしてあの人すぐに逃げたのよ」
「そうだったのか。良かった…てっきりレイプされたのかと思ったぞ」
最悪の事態は免れていたと知って誠吾が安堵する。その誠吾に山根は、ハイと車の鍵を渡した。
「若様、私まだ怖くて震えてるの。隣で手を握ってくださらない?」
「分かりました。では私が握りましょう」
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