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山根が後部座席の冴子の隣に乗り込んで、ぎゅっと冴子の手を握った。
「え……何で若様が運転して、山根さんが後ろに乗るの?」
「ボスの方が運転が上手なので。さ、私が手を握っていて差し上げますから安心してください」
「…………車に乗ったら、震えもちょっと治まったわ」
冴子は山根の手を振りほどくと、外を見つめて黙ってしまった。
山根は何も言わず無表情に前を向く。
重苦しい空気に、運転する誠吾も居心地が悪かった。
早く遥の顔を見て癒されてぇな……。
「誠吾さん、おかえりなさい……」
玄関まで誠吾を出迎えに来た遥は、誠吾の後ろに冴子が居ることに驚いて固まってしまった。
「遥、ただいま。冴子の店でちょっとトラブルがあってな……。今日はうちに泊めるから」
「はい。分かりました…」
「遥さんごめんなさいね。お世話になります」
冴子が頭を下げたので、遥も慌てて冴子に頭を下げた。
「冴子さん、部屋に案内しますのでついてきて下さい」
冴子が山根に連れられて客間に消えていくと、誠吾は遥をぎゅっと抱き締めた。
ほわっと遥のいい香りがして、一気に癒されていく。
「今日は色々ありすぎた……」
「お疲れ様、でした」
遥がぎゅっと抱き締め返す。
暫く抱き合っていたが、遥はここが玄関だということを思い出して慌てて誠吾の胸を押した。
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