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「ここ、玄関だから……」
「そうだったな。はぁ……親父のとこにちょっと報告に行ってくるな」
誠吾は遥の頭を撫でると正蔵の部屋に向かって行った。
残された遥は、中断していた明日の朝食の下ごしらえをしに台所に戻る。
冴子さんのお店のトラブルって何だろう…。
今日はこの家に泊まるのだなと思うと、胸がざわつく。
遥はふるふると頭を振った。
詳しくは分からないが冴子は家に居られないほどのことがあったというのに、つまらないヤキモチなど妬いていてはいけない。
雑念を振り払って、黙々と明日の食事の下ごしらえの作業を進めた。
「冴子って、あのカフェの年増だろ?何であの店なんか狙うんだ?シノギ先としてもたいした稼ぎでもないだろうに…」
正蔵の部屋で、誠吾が報告すると正蔵は首を捻った。
誠吾が何度か寝た女かもしれないが、もうだいぶ前に切れたと言うのに悟が狙う意味が正蔵にも分からない。
山根も部屋に呼ばれていたが、黙って誠吾と正蔵の話を聞いていた。
山根もずっと不可解に思っているのだ。
実は冴子が誠吾とよりを戻すための狂言ではないかと思っていたのだが…。
悟が未だに黒川組を狙っている件は、冴子が知っていたとは思えない。
とすると、やはり今夜悟に襲われたのかもしれないが……。
どうも腑に落ちない。
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