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翌朝、遥がいつものように食事の支度をしていると起きてきた冴子が台所に入って来た。
「いい匂い。遥さん、お料理上手なのね」
「おはよう、ございます」
遥は笑顔で挨拶をした。
二階堂悟のせいで、この人も嫌な目に遭ったのだ。この家に居る間だけでも気分よく過ごしてもらいたい。
そう思っていたのだが、冴子の言葉に遥の笑顔は凍りついてしまった。
「若様を繋ぎ止める為に、貴方も必死なのね。そうよね……若様の子どもを産んであげられないのに、お付き合いしてもらってるんですものね」
「そんな……ことは…」
「貴方みたいな子が若様を満足させてあげられる?若様、絶倫でしょ?貴方、見るからに体力なさそうだもの。若様、ちゃんと発散出来ているのかしら……」
誠吾とセックスして熱を出してから、ここ数日は体を重ねていなかった。
誠吾を満足させられているかと問われたら、我慢をさせていることは間違いない。
「若様みたいな素敵な人には、貴方じゃ釣り合わないと思うのよね」
冴子の言葉は鋭い剣のように、ぐさぐさと遥の心を抉った。
常日頃から、自分なんかには誠吾が勿体ないと思っていたのだが……他人にそれを言われると改めてショックだった。
「口を慎みなさい」
突然台所に響いた静かな怒りを孕んだ低い声に、冴子が動きを止めた。
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