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「ありがとう、ございます。僕、自信を、失ってました。誠吾さんの、恋人なんだから、もっと、しっかりしないと、ですね」
遥は俯きかけた顔を上げて、山根に言われた通り背筋を伸ばす。
冴子の言葉に惑わされずに今まで通り、誠吾や黒川組の皆の為にできることをしよう。
そう決意して、山根を見上げてにっこり笑ってみせた。
「また冴子さんに何か言われたら、私に言いなさい。あの人は私のことが嫌いですから」
「山根さん、本当に、ありがとう」
僕が困った時、悩んだ時にいつもこうして話を聞いて助けてくれるのは山根さんだ。
こんないい人に出会えて、僕は幸せだ。
冴子さんには、こんな風に話を聞いてくれる人が居ないのかもしれない。
だから、イライラしてきついことを言ってしまうのかもしれない。
ここに居る間に、少しでも打ち解けてくれたらいいのだけど……。
遥が食事の支度を再開したのを見届けると、山根は誠吾の部屋に歩いて行った。
遥が冴子に意地悪なことを言われるのも、誠吾が昔相手を選ばず遊んでいたせいだ。
そう思うと、一言文句を言ってやらないと気が済まない。
誠吾の部屋の前まで来ると、ドアの前で誠吾と冴子が立ち話をしていた。
「おぅ、山根。朝っぱらから何だ?」
「お二人こそ朝っぱらから何のお話です?」
この女狐め……。
油断も隙もありませんね…。
ボスも二人きりで話すなど、馬鹿なんですかね……。
「いや、冴子に今日うちから出るように話してたところなんだ」
「ああ、なるほど。そうですね、こんなむさ苦しいところよりホテルにでも移られた方がいいと思いますよ」
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