第9夜

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「嫌よ。いつまた襲われるか分からないのよ?ここに居た方が安全だもの」 冴子はあっさりと移動の提案を断った。 イライラする気持ちを抑えながら、山根は淡々と冴子を説得する。 「男ばかりの世帯に、女性が一人と言うのも問題がありますし……」 「あら、女性なら家政婦のおばさんが居るじゃない。二階堂って人に、もう襲われない保証ができたら出て行くわよ」 冴子はこの家を出る気はなさそうだ。 自分が連れてきた手前、誠吾も困った顔をしている。 「そもそも、ヤクザ同士のいざこざに私は巻き込まれた被害者でしょう?山根さんも、もう少し私に優しくして欲しいわ」 「冴子…とりあえず一回部屋に戻れ。お前の行先についてはまた考えるから」 山根と冴子の言い争いを見かねた誠吾が口を挟む。 冴子は山根をじろりと睨むと、さっさと部屋に戻って行った。山根は憮然とした表情で誠吾に向き直った。 「あの人、台所で尾崎君に嫌味を言って虐めてましたよ。うちを引っ掻きまわそうとしているようで……早く追い出した方が得策だと思います」 「遥を虐めてって……遥は大丈夫なのか?」 「あの子は我慢強いですけど……ずっと虐められたら可哀想です」 冴子を早く追い出したいが、本人も言うように黒川組と悟との争いに冴子は巻き込まれた形だ。 身の安全は保証してやらねばならない。 「悟の奴、やっかいな相手に手を出してくれたなぁ……」 「これが狙いだったとしたら、相当頭の切れる奴ですね………」 冴子という悩みの種を家に招き入れたことにより、家が不穏な空気に包まれていく予感がする。 誠吾と山根は大きな溜め息をついた。
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