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「じょ、冗談よ?そんなに怒らないで…」
「出て行け……」
冴子は口を開きかけて、チラリと誠吾の様子を伺うと黙って部屋から出て行った。
やはり冴子は家から追い出そう。
俺に対してあんなことを言うようでは、遥にどんな暴言を吐いているのか分からない。
支度を終えた誠吾は、東の部屋に向かった。
「若頭……。どうなさいましたか?」
「悟の動きは何か分かったか?」
「昨日黒崎の手下が、冴子さんの店付近をウロついていたようですが……。悟の姿は見つけていません」
東の報告に誠吾は溜め息をついた。
やはり、冴子の店はまだ狙われているのか……。
うちを追い出して家に戻そうかと思っていたが……まだ戻せないのか。
「冴子さん……ですか?」
「ああ。アイツ、遥を虐めてんだろ?遥は大丈夫って言ってるけど……放ってはおけねぇし……」
東は顎に手を当てて暫く考え込んでいた。
冴子については東も問題だと思っている。
遥に対する態度もだが、家の中をウロウロしてどの部屋にも自由に出入りするので正直困っているのだ。
大事な情報などが漏れないよう、パソコンにはロックをかけて書類は金庫にしまってあるのだが……。
二階堂の者が店の周りをまだうろつくのだから、本当に被害に遭っているのだろうが…。
恋人の山根同様、どうも東も冴子のことが信用できないでいた。
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