第10夜

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冴子が家に来てから、遥の日常は穏やかなものとは言えなかった。 朝からずっと冴子に付き纏われ、ちくちくと嫌味を言われ、お茶が飲みたいだの服にアイロンをかけろだの、次々と遥に命令してくるのだ。 冴子は自分の日常を悟に奪われ、黒川に来ても誠吾しか知り合いが居ないのだと思うと、何を言われても遥は冴子を嫌いにはなれなかった。 強気な態度も心細さからだとしたら、黙って受け止めてあげたいと……。 そう思って遥は冴子に言われるままになっているのだが、周りで見ている者にとっては遥が虐められているのが心配で堪らなかった。 「姐さん、あの女にさっきも何か言われてませんでした?」 「何も、言われて、ないですよ」 宿題をしながら青山が尋ねても、遥は笑って何も無いと言う。 山根や他の者の目がある為、冴子も遥が一人の時を狙って意地悪をしているらしく、なかなか現場を押さえて文句を言うことが出来ないでいる。 何で尾崎があんな女に虐められないといけないんだ……。 一緒に宿題をしている山田の心中も穏やかではない。 冴子の言葉に傷付いて泣いている遥を見てしまったから……。 「おう、お前ら。そろそろ登校する時間だぞ」 支度を終えた誠吾が、勉強をする三人に声を掛けに来た。 「宿題終わったか?」 「はい。姐さんのおかげでなんとか……」 青山も山田も、本業の合間になかなか宿題をする時間が無く、登校前にこうして遥が二人に宿題を教えたり授業で分からなかったところを教えたりしている。
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