2798人が本棚に入れています
本棚に追加
誠吾になるべく外に出るなと言われている。それに、非力な自分で冴子を守れるのか自信がないが……。
「今まで色々酷いことを言ってごめんなさい……。でも、取りに戻るなら今しかなくて……。遥さんにしか頼めないの……」
お願いしますと冴子が遥に頭を下げた。
あれほど自分を敵視していた冴子がこれだけ頼むのだから、応えてはあげたいが…。
軽はずみな行動で誠吾に迷惑をかけるのは避けたかった。
「誠吾さんに、聞いてから…」
「若様は大事な会食でしょう?30分もあれば行って帰って来れるから…。お願いします」
冴子の必死さに、遥は仕方なく頷く。
30分で帰ってこられるなら、誠吾に報告するまでもないのかもしれない。
それに、冴子の店は黒川のシマの中だ。
悟もすっかり気配を消しているし、少しだけ冴子に付き添ってあげるくらいなら大丈夫だろう。
「では、出かける支度を、してくるので、玄関で、待っていてください」
「ありがとう遥さん。本当に感謝するわ」
洗った浴槽を水で流し、遥は掃除で濡れてしまった衣服を着替えて玄関に向かった。
冴子がこんな頼み事をしてくるなど、自分に少しでも心を開いてくれたのかなと思うと嬉しかった。
「あれ、姐さん…。お出かけですか?」
冴子と連れ立って出掛けようとする遥に、門のところで見張りをしていた若い組員が声を掛けてきた。
遥が狙われていると知っている組員は、護衛に誰もついていないことに不審な目を向ける。
最初のコメントを投稿しよう!