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「若様に許可は取ってあるわ。ここで待ってるから確認してらっしゃいよ」
「本当ですか?じゃあ、少しここで待っていてくださいよ」
若い組員が屋敷の中に消えて行くと、冴子は「馬鹿ねぇ」と小さく笑った。
誠吾に許可なんか取っていない。
確認されたら嘘だってすぐに分かるのに…。
「さ、今のうちに行きましょ」
戸惑う遥の手を取って、冴子は走り出した。
これはまずいのではないか……。
ついていくべきではない気がする。
だが、冴子の手を振りほどいて一人で行かせるわけにもいかない。
冴子さんの用事を早く済ませてもらって、急いで帰って来よう…。
遥は諦めて冴子に手を引かれるまま、走った。
運動を制限されていたので走るのは久しぶりだ。走り出してすぐに息が苦しくなったが、女の冴子が走っているのだ。
弱音を吐くわけにはいけないと、頑張って走った。
誠吾が藤代組の佐山に会いに行っている間、正蔵は電話で二階堂の組長と話をしていた。
若頭の黒崎が、裏で薬の取引をしているとの証拠を掴んだと言う。
取引先は、以前悟と繋がっていたところで、黒崎を問い詰めようとしたところ今朝から姿を消しているらしい。
『黒川さんのところに迷惑かけないといいんだが……。本当に申し訳ない。悟の件も黒崎の件も……俺に見る目が無かったばかりに…』
二階堂としては面目丸潰れだ。
今、血眼になって悟と黒崎を探しているらしい。
『今度こそ悟も黒崎も……見つけ次第タダじゃ済まさない…』
「うちのシマで見つけたら、すぐに連絡させてもらうよ」
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