第10夜

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「若様に許可は取ってあるわ。ここで待ってるから確認してらっしゃいよ」 「本当ですか?じゃあ、少しここで待っていてくださいよ」 若い組員が屋敷の中に消えて行くと、冴子は「馬鹿ねぇ」と小さく笑った。 誠吾に許可なんか取っていない。 確認されたら嘘だってすぐに分かるのに…。 「さ、今のうちに行きましょ」 戸惑う遥の手を取って、冴子は走り出した。 これはまずいのではないか……。 ついていくべきではない気がする。 だが、冴子の手を振りほどいて一人で行かせるわけにもいかない。 冴子さんの用事を早く済ませてもらって、急いで帰って来よう…。 遥は諦めて冴子に手を引かれるまま、走った。 運動を制限されていたので走るのは久しぶりだ。走り出してすぐに息が苦しくなったが、女の冴子が走っているのだ。 弱音を吐くわけにはいけないと、頑張って走った。 誠吾が藤代組の佐山に会いに行っている間、正蔵は電話で二階堂の組長と話をしていた。 若頭の黒崎が、裏で薬の取引をしているとの証拠を掴んだと言う。 取引先は、以前悟と繋がっていたところで、黒崎を問い詰めようとしたところ今朝から姿を消しているらしい。 『黒川さんのところに迷惑かけないといいんだが……。本当に申し訳ない。悟の件も黒崎の件も……俺に見る目が無かったばかりに…』 二階堂としては面目丸潰れだ。 今、血眼になって悟と黒崎を探しているらしい。 『今度こそ悟も黒崎も……見つけ次第タダじゃ済まさない…』 「うちのシマで見つけたら、すぐに連絡させてもらうよ」
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