第10夜

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電話を終えた正蔵が、遥にお茶を淹れてもらおうと台所を覗いたが遥はそこには居なかった。 「掃除でもしてるのか…」 ならば自分で淹れるかと戸棚から湯呑みを出したところで、若い組員が廊下を歩いてくるのが見えた。 「おい、お前はこの時間見張り番だろ?」 「親父さん。若頭はどちらに居ますか?」 「誠吾?誠吾なら山根と藤代に出向いてるぞ」 正蔵の返事を聞いた組員は、驚いた顔をした後、すぐに真っ青になってしまった。 「大変だ……。姐さん……」 「遥?遥がどうした…」 正蔵に返事もせず、組員は慌てて玄関に向けて駆け出して行った。 遥がどうしたのか気になった正蔵も、慌ててその後を追う。 門のところで組員は立ち止まり、後ろから追いかけて来た正蔵をおそるおそる振り返った。 「親父さん……。申し訳ありません」 「どうしたんだ?遥に何があった?!」 「先程、姐さんと冴子さんが……二人で外に出て行かれました。若頭の許可を取ったと言っていて……」 あの年増が遥と出かけただと? 誠吾に勝手に出ないよう言われている遥が出ていくなど…何があったのか。 「お前はすぐに中に居る東に報告しろ。俺は誠吾に連絡する」 良くない予感しかしない。 あの冴子という女は嫌な感じがした。 悟に襲われたと言うのでうちに置いていたが…。 本当に襲われたのだろうか? 何故遥を連れ出した? 正蔵も急いで家に戻って携帯から誠吾に電話を掛けた。
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