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「遥のGPSを追ってみてるか?」
「それが……GPSの信号が途絶えてしまって…。冴子さんの店が最後の発信地ですね」
GPSの信号が途絶えるということは、遥の携帯が壊れたということか。
壊れたのか、壊されたのか……。
とにかく、早く遥の身の安全を確保しないといけない。
「山根、すぐに冴子の店に向かう。家の者も何人かそっちに向かわせろ」
もっと早く冴子を家から出しておけば良かった。今日中に移そうと思っていたのに……敢えて今日行動を起こすとは…。
悟に襲われたと言うのも狂言だったのだろうか…………。
黒川に入り込んで内側からうちを揺さぶるのが目的だったとすれば、その後ろには間違いなく悟が居る。
今度こそ……誠吾が悟と決着をつける時が近付いていた。
冴子に連れられて、遥が冴子の店に到着した時、久しぶりに走った遥は息が上がってふらふらになってしまっていた。
「遥さん、本当に体力が無いのね。黒川で姐さんなんて呼ばれてるんだから、もっと体力がないと駄目なんじゃないの?」
「すみ……ません…」
「お水でも飲んだ方がいいわね。さ、中に入ってちょうだい」
冴子に招き入れられて店内に入ると、暫く無人だった筈の店の中からは煙草の匂いがした。
冴子は煙草を吸わないのだが……。
だが、それを不審に思う余裕は遥に無く、ぐったりと店のソファに座り込んだ。
「今、お水を持ってくるわ。ゆっくり休んでいてね」
「ありがとう、ございます」
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