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「悟さん、そんな子さっさと殺してしまえばいいわ。その子が居るから若様が惑わされるのよ」
「煩いな……。お前はこのお姫様より自分の方が魅力あるとでも思ってんのか?」
文句を言い始めた冴子を、悟がじろりと睨む。
冴子は悟に睨まれても怯むことなく文句を言い続けた。
「当たり前じゃない。私の方が若様に相応しいんだから。誰が見てもそうでしょ?さ、早く殺しちゃってよ」
悟は、はぁ……と溜め息をつくと遥の舌から指を離し、抑揚のない声で黒崎に命じた。
「黒崎、この女煩い。黙らせろ」
「かしこまりました」
黒崎は淡々と返事をすると、ソファから立ち上がって冴子の髪を掴んで無理矢理立ち上がらせた。
「痛いっ……、何するの?話が違うじゃないの…。この子を排除して、私を黒川組の姐さんの座に据えてくれるって……」
「誠吾がお前なんか相手にする訳ないだろ。このお姫様に夢中なんだから。お姫様は俺の手に入ったし、お前はもう用済みだ」
悟はしっしっと手を振って、冴子を冷たい目で見つめた。
こんな筈じゃなかった。
誠吾を誑かすこの男の子を、黒川から追い出して自分が再び誠吾を手に入れる……悟はその手助けをしてくれると言ったのだ。
「冴子さんを、どうする、気ですか?」
「んー?この女、俺嫌いだもん。死んでもらおうかなって」
そうだった……。
この人は、人の命なんて何とも思っていないんだ。
冴子さんは、このままでは殺されてしまうかもしれない。
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