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「黒崎!聞こえてんのか?早くしろ!」
悟の忠実な下僕である黒崎が、すぐに返事をしないことにイラついた悟が大声をあげる。
それでも黒崎からの返事はない。
「黒崎!」
「呼んでも黒崎は返事なんかできねぇよ。そこで伸びてんだから」
裏口のある奥の部屋から、誠吾がゆっくりと現れた。
裸で手を縛られ口枷を付けられた遥を担ぐ悟と視線を合わせると、誠吾は低く唸った。
「お前……遥に何をしやがった」
「お姫様を味見させてもらったけど……凄いねこの子。もうお前に返したくなくなったわ」
誠吾の後ろから山根が顔を出す。
あられもない遥の姿を見て、山根も息を飲んだ。
「遥を離せ。お前はもうお終いだ……」
「そこを退けよ誠吾。お姫様は俺の手の中にあるんだぜ。少しでもおかしな真似したら、この細い首折っちまうからな」
誠吾は拳をきつく握りしめて悟を睨んだ。
誠吾は自分には手を出せない。
そう思う悟には余裕があり、にやにやと笑いながらゆっくりと歩みを進める。
とりあえずこの場を離れて、後から誠吾に遥と引き換えに二階堂組長を殺すよう指示すればいい。
黒川組の大事な姐さんが自分の腕の中に居るのだ。この状況でも、悟は無敵だと思っていた。
「どうせ黒川組は俺に手を出せないだろ?さっさと退けよ」
「黒川さんのところは退くかもしれませんけど、うちは退きませんよ」
山根の後ろから、薄く微笑む藤代組の佐山が顔を出す。
遥が冴子に連れ出されたと連絡を受けた誠吾は、すぐに会合場所から飛び出ていこうとした。
その時、悟が噛んでいるなら手助けすると佐山が申し出て一緒にここまで来たのだ。
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