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「お前は……藤代の佐山じゃねぇか。何でお前が誠吾とここに来るんだよ」
「貴方が流通させている薬でのせいで、うちの組でもかなり迷惑をかけられたので…。しっかりご挨拶しようと思いましてね」
佐山の言葉遣いは丁寧だったが、悟に対する怒りのオーラを強く放っている。
遥を人質にとっても、佐山に対してはあまり有効とは言えない。
つい先程まで余裕を見せていた悟の顔から、にやけた笑いはすっかり消えていた。
「黒川組と藤代組が組んで来るなんて……卑怯じゃねえか……」
「卑怯って……どの口がそんなことを言うんだ?」
いつの間にか入口に移動した山根が開けた正面のドアから、二階堂組の組長が鬼の形相で現れた。
「悟……お遊びはもう終わりだ。お前には…きっちりと落とし前をつけてもらわないといけない」
「親父……。元気そうだな…」
黒川と藤代、そして二階堂が揃った今、遥を手にしているとはいえ悟に勝ち目はない。
「マジか……。こんなところで、こんな間抜けな終わり方するのか?俺は……」
「自業自得だ。お前は好きにやりすぎた」
悟は観念した様子で、担いでいた遥をどさりとソファの上に置いた。そのまま両手を挙げて、抵抗する意思がないことを示す。
山根がソファの遥に駆け寄って、拘束を解き始めた。
「黒川さん……この度は大変なご迷惑をおかけしました。悟を処分したら、改めてケジメはしっかりつけますんで……」
二階堂組の組長は、誠吾に深々と頭を下げると、悟の首根っこを掴んで店内から出て行った。
今度こそ悟も終わりだろう。
連れていかれる時、悟は誠吾をチラリと見たが何も言わなかった。いつもの人を馬鹿にしたような笑顔もなく、無表情に去る悟を見送ってから誠吾は遥に駆け寄る。
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