第10夜

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「遥………大丈夫か?」 誠吾が遥に触れようとすると、遥はビクッと反射的に身を引いた。 「見ないで……」 絞り出すような小さな声でそう言うと、遥は誠吾を避けるように山根にしがみついた。 遥の太腿に血液混じりの精液が垂れている。 悟に乱暴されたのは明らかだった。 「ボス、尾崎君を病院に連れていきましょう。そこで転がってる冴子さんも……」 「あ、ああ………」 乱暴された遥の姿にショックを受けていた誠吾は、山根の言葉で我に返った。 遥がこんな酷い目に遭ったのは……全て俺の責任だ。 今までも何度も辛い思いをさせて、今度こそ守ってやろうと思っていたのに……。 カタカタと小さく震えながら山根に抱き抱えられている遥に、誠吾は何と声を掛けたらいいのか分からなかった。 声を掛ける資格が、自分にはない気がする。 「黒川さん、私はここに残って後処理をしておきます。黒川さんは病院に付き添ってあげて下さい」 「佐山さん……悪いな…。よろしく頼む」 佐山の申し出をありがたく受けて、誠吾は遥と冴子を連れて山根と病院に向かった。 冴子は移動中も意識を失ったままで、遥はずっと身を小さくして震えていた。 後部座席で遥の隣に座る山根が、ずっと震える遥の背中をさすっている。 その様子を運転席からバックミラーで確認しながら、誠吾の胸は苦しいほど傷んだ。
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