第10夜

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本当なら俺が遥を抱きしめて遥の震えを止めてやりたい……。 だが、俺と付き合ったせいで……俺が冴子を家に入れたせいで遥は悟に犯されたんだ…。 俺に遥を慰める資格なんかない……。 俺に出会わなければ、父親の借金のせいで生活は苦しかったかもしれないが、遥は普通の人生を歩んでいた筈だ。 普通に女と恋をして、大怪我や…ましてや男にレイプされるなんてこともなく、ささやかでも幸せに暮らせたはずなんだ……。 二度の大怪我を乗り越えて、それでも笑って俺と一緒に居られて幸せだと言ってくれていた……。 俺は遥に甘えすぎていたんだ……。 今回は命に関わるような怪我はしていないが、遥の心のダメージは大きいだろう。 俺のところに……戻ってきてくれるだろうか。 誠吾の運転する車が、遥のかかりつけの病院に到着すると、病院では正蔵と青山が待っていてくれた。 遥は正蔵達とも自分から目を合わせることなく、処置室に運ばれて行った。 「あんなに……遥に拒絶されたの……初めてだ」 「尾崎君もパニックになっているのだと思いますよ。恋人に……他の男にレイプれた直後のところを見られたのですから」 山根にそう言われても、怯えた目で自分を見た遥の顔が忘れられない。 『見ないで……』 どんな気持ちで遥はああ言ったのだろう。 遥の気持ちを思うと、誠吾の胸は張り裂けそうだった。 誰よりも遥のことを幸せにしてやりたかったのに…。
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