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「体……気持ち悪くて、シャワーを、お借りできますか?」
「ああ……そうですよね。こちらへ……」
バスルームで遥は服を脱いで、鏡に映る自分の姿を見た。
縛られた跡や、小さな擦り傷……。
悟による暴行の跡が自分の体に残っている。
誠吾さんに……見られた…。
遥はシャワーを浴びながら、石鹸を使って何度も何度も体を洗った。
ごしごしと擦っても、悟に残された跡が消えない気がして、泣きながら何度も体を擦り続けた。
バスルームの中から、遥の泣き声とシャワーの水音がずっと響いてくる。
着替えを見繕って持って来た山根だったが、ドアの前から動けず、中に入ることは出来なかった。
二階堂悟からの脅威が無くなっても、悟の残した爪痕はあまりにも深く、遥の心を引き裂いてしまった。
傷付いたあの子に対して、自分に何ができるのだろう……。
聡明な山根にも、どうしたらよいのか分からない。
誠吾は大丈夫だろうかと、山根は誠吾のことも心配だった。
遥に拒絶された時のショックを隠しきれない誠吾の表情を思い出す。
柄にもなく思い詰めていないといいのですが…。
シャワーの水音は暫く止むことは無かった…。
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