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「少し、落ち着きましたか?」
「はい…。シャワー、ありがとう、ございました」
バスルームから出てきた遥は、強く擦ったため皮膚が真っ赤になっており目も腫れていた。
山根はそのことには触れず、遥の前にホットミルクの入ったマグカップを置く。
「これを飲んで、今日はもう寝なさい」
「はい…………」
ホットミルクを一口飲めば、優しい甘さが身体の隅々まで染み渡るようだ。
ホッとした遥の目に、またじわりと涙が滲んだ。
「尾崎君……辛かったですね…」
「もう、誠吾さんのところに、帰れません……」
「そんなことを言わないで。君が居なくなったら…あの人死にますよ」
遥は両手で顔を覆って俯いた。
誠吾のところに帰りたい。
だが、自分は他の男を受け入れてしまった……どんな顔をして誠吾に会ったらいいのか。
「とりあえず体も辛いでしょうから、今日はもう休んで……。私はソファで寝ますから、何かあれば言ってください」
「ごめんなさい………」
泣き疲れて遥が眠るまで、山根はずっと傍に付き添った。
身も心もボロボロになった遥は、一回り小さく儚く見えて……このまま消えてしまうのではないかと不安になる。
前回襲われた時、この子はボス以外に体を許すくらいなら死のうとしたのですよね……。
悟に犯されたということが、遥にとってどれほど辛いことだったのか……。
せめて今夜は嫌なことを思い出さずに、ゆっくりと眠れるといいのだが…。
そう思いながら、山根は小さく丸まって眠る遥の頭をそっと撫でた。
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