第1夜

20/21

2795人が本棚に入れています
本棚に追加
/232ページ
「ああ。よろしく頼むな。遥は……無防備で危ないところがあるからな」 今日一日一緒に過ごしてみて、青山にもそれが分かっていた。素直で警戒心のない遥は、悪い人間にとっては格好の獲物だろう。 遥は悪い男に捕まって、一度大怪我をしているのだ。 二度とあんなことがあってはならない。 「お風呂気持ちよかったです」 風呂上がりの遥は、ほんのり肌を上気させて髪もまだ濡れたまま部屋に戻ってきた。 「また髪の毛を乾かして来なかったのか?」 「すぐ乾くからいいかなぁって……」 風邪をひきやすいくせに……誠吾は苦笑しながらタオルで遥の髪をガシガシ拭いた。 「わっ……。大丈夫ですよ。もう乾いてきました。乾いてきましたから」 「風邪引いたらどうするんだ。明日は検診の日だろ?」 誠吾の言葉に遥は大人しくなって黙ってされるがままになった。 以前の大怪我のせいで遥には片方の腎臓が無い。なので、定期的に体調に異常がないか検診を受けていた。 「元気だから行かなくてもいいと思うんですけど……」 「馬鹿。元気なのを確認しに行くんだろ。明日は俺も一緒に行くからな」 明日は検診に付き添えるよう、山根に仕事は調整してもらっている。 受験や入学で無理をした遥の体が心配だった。 「明日は検診だから、今夜は……しないからな」 「あ………はい」 遥は恥ずかしそうに俯いた。 昨夜入学式を控えていたので体は重ねなかったので、今夜はするのかなと思っていたのだ。
/232ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2795人が本棚に入れています
本棚に追加