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「…………君は、私が出掛けたらここから居なくなるつもりなんじゃないですか?」
鋭い山根の言葉に遥は怯んでしまった。
山根を騙して出ていくのは無理のようだ。
「ボスと……別れるおつもりですか?」
「だって……もう、僕は汚れちゃったから。誠吾さんと、一緒には、居られません…」
そう言って俯いた遥を、山根はぎゅっと抱き締めた。
この子にこんなことを言わせるなんて……。
こんなに心の綺麗な子に……。
「尾崎君は汚されてなんかいませんよ。君は綺麗なままです」
「だって……僕は、二階堂悟に、最後まで、されたから…。誠吾さんに、合わせる顔が……ないです」
最後の方は、震えてしまって聞き取れないほどの小さな声だった。
「そんなの……君の落ち度じゃないでしょう?とにかく、黙って居なくなるのは止めてください。ボスが血眼になって探し回りますよ」
「これ以上、誠吾さんの、重荷に、なりたくないです…」
重荷だなどと、あのボスが思う訳ないのに。
二人とも、相手を思いやりすぎて拗れてしまっているなと山根は思う。
ならば二人でちゃんと向き合って話し合えばいいのだ。
なのに、お互いがお互いを失うのが怖くて向き合えないでいる。
何かきっかけがあればよいのですが……。
山根が考え込んでいると、携帯が鳴った。
発信者は山根の恋人である東からだ。
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