第11夜

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「…………君は、私が出掛けたらここから居なくなるつもりなんじゃないですか?」 鋭い山根の言葉に遥は怯んでしまった。 山根を騙して出ていくのは無理のようだ。 「ボスと……別れるおつもりですか?」 「だって……もう、僕は汚れちゃったから。誠吾さんと、一緒には、居られません…」 そう言って俯いた遥を、山根はぎゅっと抱き締めた。 この子にこんなことを言わせるなんて……。 こんなに心の綺麗な子に……。 「尾崎君は汚されてなんかいませんよ。君は綺麗なままです」 「だって……僕は、二階堂悟に、最後まで、されたから…。誠吾さんに、合わせる顔が……ないです」 最後の方は、震えてしまって聞き取れないほどの小さな声だった。 「そんなの……君の落ち度じゃないでしょう?とにかく、黙って居なくなるのは止めてください。ボスが血眼になって探し回りますよ」 「これ以上、誠吾さんの、重荷に、なりたくないです…」 重荷だなどと、あのボスが思う訳ないのに。 二人とも、相手を思いやりすぎて拗れてしまっているなと山根は思う。 ならば二人でちゃんと向き合って話し合えばいいのだ。 なのに、お互いがお互いを失うのが怖くて向き合えないでいる。 何かきっかけがあればよいのですが……。 山根が考え込んでいると、携帯が鳴った。 発信者は山根の恋人である東からだ。
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