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「拓馬。何かありましたか?」
『姐さんはどうだ?』
「体の方はだいぶ良さそうなのですが…」
チラリと遥の様子を見て、通話を続けるため山根は廊下に移動した。
「悟に犯されたのが相当ショックだったらしく……ボスに申し訳ないと言って、別れるつもりみたいですよ。困りました…」
『そうか……。実は今日、藤代の坊と話す機会があってな…』
東の話を聞いていて、山根はこの状況を打開する光を見た気がした。
「それ、いいかもしれませんね。ボスに言って藤代に話を通して貰えますか?」
『分かった。上手くいくといいな…』
電話を切った山根は、いつもながら東の機転に感謝していた。
私など、ボスと尾崎君の間でオロオロしているだけだったのに…。
拓馬は状況を打開するためにちゃんと色々考えてくれていたのですね…。
遥が悟に犯された事実は変えることは出来ない。
だが、それによって拗れてしまっている誠吾との仲は元に戻せるかもしれない…。
「山根さん……。東さん、何でした?誠吾さんに、何か、あったのですか?」
「いえ、何も。尾崎君が心配するようなことはありませんよ」
「そうですか…。それなら、良かったです」
山根がそう言って遥の頭を撫でると、遥はホッとした顔を見せた。
こんなにボスのことが好きなくせに、自分から身を引こうなどと……。この子にはどうか幸せになってもらいたい。
まあ、あのボスにはこの子は勿体ないのですが……。
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