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「ボスは藤代の若頭にお会いするの、初めてなんですよね」
「あ、ああ。藤代組からは、いつも佐山さんが会合に来てたからな。組長には会ったことがあるが…若頭はまだ高校生らしいからな」
藤代組の若頭は高校生なのか…。
僕とさほど歳も変わらないのに、若頭なんて凄いなと、遥は二人の会話を聞きながら思った。
「坊は高校生ですけど、いい器を持ってますよ。藤代はこれから伸びると思います」
「東は会ったことがあるんだったな」
「ええ。以前、藤代でゴタゴタがあった時に応援に行きましたので…」
どうして僕はここに居るんだろう。
組同士の話なら、僕がここに居るのは不自然じゃないのかな。
車内は藤代組についての話題で、遥は話についていけず黙って車窓から流れる景色をぼんやりと眺めていた。
もしかして………。
以前、冴子さんを他所の組に移すと言っていたけれど……。
それが藤代組なんじゃないだろうか。
今度は僕を、藤代組に移そうとしてるの?
黒川組に……必要ないから?
さあっと遥の血の気が引いていく。
自分から誠吾と離れようと思っていたのに、改めて不要と思われているのかと思うと……想像以上に悲しかった。
そもそも、僕のことなんかを押し付けられる藤代さんにも申し訳ない。
向こうに到着したら……丁重にお世話になるのはお断りしないと。
ちゃんと自立できるよう、しっかりしなくちゃダメだ。
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